曇りのち雨、ところにより猫

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頭上でゴロゴロと気味の悪い予告を繰り返す雷雲に、男は構う様子も無かった。街の中心部を流れる川の土手を深夜、憑かれたように黙々と歩く。 突如雲間が裂けた。閃光は男のすぐそばの木を直撃し、爆音と共に辺りは白昼の光に包まれる。 棒切れの様に倒れた男はそのまま転がって草間に消え、辺りには不穏な静寂が残された。 ◆ 遠ざかっていく救急車の音に揺り起こされ、時田純平は重い瞼を開けた。やけに背の高い草のむこうに、見覚えのある川沿いの土手が見える。 今がいつなのか、自分の身に何が起きたのか、状況がはっきりしない。 霞む目を擦ろうとしたが、顔に触れたのは柔らかな毛で 覆われた何かだ。改めて自分の手を見る。 ――え? 腹を見る。足を見る。萎えた足でヨタヨタと一周して背中を見る。 ――ちょっとまて。 横を見ると背丈ほどもある巨大なダンボールがひっくり返っていて、やはり巨大な文字で「拾って 下さい」と書いてある。 そんなバカな……とは思ったが、恐る恐る声を出してみると喉の奥からは細いミィ~という音しか出てこない。
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