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夢を見た。やくざが出て来て“人を殺せ”という。振り返ったらヤクザの顔が猫で……。
時田純平は、フワフワする温かさの中で目を開けた。そして辺りを見回す。目に映ったのは見知らぬ部屋だった。寝ているのはいつもの煎餅布団ではなく、幾重にも重なったタオル。そして枕は白くて猫のような……前足。
「!」
何かとんでもない事を思い出し、純平は思わず立ち上がった。思うように動かない体はタオルベッドの淵を踏み外し、そして鼻面から床に落ちた。
「プミャッ」
――やっぱりそうだ。この声、この体。夢じゃない。俺はあの時……。
「ちくわ」
ハッとして純平は声の方を仰ぐ。
「目、覚ましたな。良かった」
見覚えのある青年が純平を見下ろし、ほんの少し笑った。
「腹減ったろちくわ。ちょっと待ってろ」
青年は純平の体を両手でそっとタオルのベッドに戻し、立ち上がる。目はぼんやり霞んだままだが、純平にはようやく状況が呑み込めてきた。
ここはどうやら青年の部屋。純平のアパートとそれほど変わらない質素なワンルームのようだが、小奇麗に片付けられている。
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