78人が本棚に入れています
本棚に追加
けれど 至福の時間は呆気なく終わり、純平は再び抱え上げられた。そして今度は軽い小石の敷き詰められた容器に入れられる。
「俺これからバイトだから、その前にトイレ覚えとけ。ここでおしっこと ウンチ、するんだぞ」
そう言って指先で純平のお尻をトントンとつつく。
「!」
純平はあまりの恥ずかしさに“トイレ”を飛び出し、部屋中を闇雲に暴走した。くず 籠にぶつかって一緒に転倒し、中のものが散乱してやっと我に返る。
「うあ~やっちまったな、ちくわ。掃除する時間ねぇのに」
それでも怒る気配もなく青年は笑っている。青年の大らかさにジンとしながら、申し訳ない気持ちで純平は散乱したゴミを見渡した。
けれど数枚のDMハガキに書かれた宛名を見て、心臓 がドクンと跳ねた。
――村井誠司。
その名も住所も知っている。
『殺して来い 』と純平が依頼された、ターゲットだった。
最初のコメントを投稿しよう!