とあるオールド・ミスとミスタの話

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「これから先、ずっと君のそばに居るために。ただの雑役婦の息子じゃ、牧師館の娘を娶ることはできないからね。それなりの地位と財産が必要だった。――たとえば、新聞王の孫だとか」  すべては、自分との約束のためだったと言うのか。そう思えば、自分たちはどれほど遠回り、空回りしてきたのだろう。  山羊革の手袋に包まれた大きな手が、ソフィの手を取った。絡んだ指先の感覚は凍えて鈍いけれど、そこには確かに温もりがある。 「あなたは今、幸せ? ――ルーク」 「そうだな、君が俺の名前を呼んでくれたからそれなりには幸せだ」 「それなりなの?」 「もっと幸せになる方法、知りたいかい?」  ソフィが不満げに唇を尖らせると、ルークは囁くように彼女の耳元へ唇を寄せた。  落とされるのは、悪戯めいた答えか、それとも。 「ええ、知りたいわ」  あなたのことなら何でも、と。  続く言葉はヤドリギの下、聖夜の魔法に混じり合って舞い散った。 end
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