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家の前まで行くと、あの下品な声が聞こえてきた。
「もういい加減諦めな! うちはもうお金がないんだ」
また貧乏話か。
「待ってくれ。それだけはやめてくれ!」
喧嘩しているようだった。
入るのも火に油を注ぐようなものと考えて、僕らは家の外で聞き耳を立てる。
「明日の夜、捨てにいくよ!」
「前妻が残した宝なんだ。な? 考えてくれよ!」
「あんたの稼ぎが悪いからこうなってんだ。それを弁えてほしいね。あたしは、あんたに幸せにしてやるって言われたからついてきたんだ。話が違うじゃないか」
それっきり、父さんは何も言えない。丸め込まれたみたいだ。
話の流れを聞いて何となく把握できた。
僕らは明日の夜、捨てられてしまうらしい。怖くなったのかグレーテルが手を握ってきた。
「心配すんな。僕が何とかするから」
そう優しく言うとグレーテルは少し泣きそうになりながらも、グッと堪えた。
僕らは少し時間をおいて、家に戻った。
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