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「お兄ちゃん! あそこにリスいる!」
「リスはこの辺じゃ珍しくないだろ」
好奇心旺盛なグレーテルは、ほんのちょっとのことで感動する。
喜ぶときは100%喜んで、悲しいときは100%悲しんで、とても起伏が激しい。
一方僕は少しそういう感性が欠けているみたいで、あまり感動しない。
「えー、結構大きいリスだったんだよ?」
「はいはい」
「もー! お兄ちゃん反応薄い!!」
あ、ちょっと怒らせたかな?
そう思いつつ、そのコロコロ変わる表情が愛しくて僕は少し意地悪くなる。
「お前の反応がでけぇの」
ふんっと笑ってやると、リスも驚くぐらい頬が膨れてる。面白い。
「お前がリスになってどうすんだよ」
笑いながら頭を撫でる。
そろそろ昼だな。
「おい帰るぞ」
「えっ……」
途端、グレーテルの顔が凍りつく。
あ、帰りたくない顔だ。
「もう昼御飯。帰らないと怒られる」
そう言うとグレーテルは渋々川から上がって足を拭いた。
靴を履く彼女の背中は悲哀に満ちていて、気の毒になってくる。
僕らが住むのは木こりの家。
父さんがきこりで、僕もたまに手伝ったりする。
そろそろ父さんが戻ってきて、母さんが昼食を作って待ってるはずだ。
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