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「今日、付き合えよ」
ゆう子さんに本格的に避けられて、身も心もやさぐれて、どうでもよくなりそうだ。
龍太に八当たるように電話すると、ただ事じゃない雰囲気を察して、龍太がすぐに現れた。
土曜の夜だったから、既に飲んでいた俺は、インターホンがなっても立ち上がりもせずに、
「開いてるぞー」
と、不躾に叫ぶ。
玄関のドアが開いて龍太が入ってくる。
「お・・お前・・・目が坐ってるよ」
俺の顔を見た龍太がぎょっとしたように言う。
「仕方ないだろ?飲んでるんだから。」
「まだ、そんなに飲んでないじゃん。何やさぐれてんの?」
テーブルの上には、ビールの缶が二つほど転がっている。
もちろん、まだ、飲んだうちに入らない。
「やさぐれてる?やさぐれてないし。」
恰好悪いところをすべて知っている幼馴染の前だから、落ち込んでいるところを隠しもしない俺。
「なんか・・・めんどくせーことになってるな・・・」
苦笑いしている龍太。
「今日は、お前を潰す。潰して憂さ晴らしする。覚悟しろ」
「憂さ晴らしって・・・なんて迷惑な奴だ」
龍太は、大げさにため息をついて、俺の前に腰を下ろし、
「で?何があった?」
と、言った。
「・・・・別に。」
「もしかしてゆう子さんからフラれたか?」
「・・・・」
「まじ?告ったの?」
「・・・告ったけど・・・」
もう、きっと、ダメだってことなのだろう。
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