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「二人はすごくお似合いですよ。美男美女とかではなくて。だって、早良くん、ゆう子さんの迎えを頼んだとき、当たり前のように来てくれましたよ。自分を呼んでくれて良かったって言われました。」
堰を切ったかのように、美羽ちゃんが話し出す。
「・・・美羽ちゃんさ、私の進路知ってるよね。」
留学して、卒業した後は、海外で働きたいという目標がある。
「・・・」
「そしたらさ、いつかは離れ離れなんだよ。始まってもないけど考えないわけにはいかないじゃない?」
じゃあ、海外で働くのは諦めたらいい、と頭ではわかるけど、そんなに単純な話でもない。
「ゆう子さん・・・」
「私のせいで、早良くんを振り回したくないし、始まってなければ、始まらないほうがいいんだよ」
「・・・」
美羽ちゃんが泣きそうな顔をしている。
「ごめん。美羽ちゃん」
「いえ・・・お節介がすぎました」
「そんなことないって。お似合いって言ってくれたの、嬉しいし」
悲壮感が漂う雰囲気を少しでも和らげようと、笑って見せる。
「・・・早良くんは、ゆう子さんに振り回されたくないって思ってるのかな・・・・」
ぽつりと美羽ちゃんが呟く。
「・・・・どうかな・・・・」
だけど、早良くんは巻き込めない。
お通夜みたいな空気が更衣室に立ち込める。
「帰ろっか。美羽ちゃん」
真っすぐすぎる美羽ちゃんの瞳には、涙が溜まっていた。
私もこんなふうにまっすぐになれたら・・・・と、思わずにいられない。
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