#36 るい

5/6
630人が本棚に入れています
本棚に追加
/480ページ
「ほんとに悪かった。」 ゆう子さんの家の前で下ろしてもらうと、龍太は勢いよく頭を下げた。 「もう、いいって」 きっと、龍太はきっかけにすぎない。 俺だって長い間、友達以上恋人未満の関係に甘んじていたし、ゆう子さんに向き合うのが怖かった。 本当は、もっともっと前に、既に好きだったはずなのに。 ゆう子さんの家のインターホンを鳴らす。 「え?早良くん?どうしたの?」 ゆう子さんがびっくりしながらドアを開けた。 すっぴんに眼鏡のゆう子さん。 「ゆう子さん、話があります」 俺がゆう子さんに詰め寄ると、ゆう子さんは眼鏡の奥の瞳を丸くした。 「ゆう子さんのことが好きです。ゆう子さんは俺のこと、どう思っていますか?」 「・・・・」 ゆう子さんの顔が苦し気に歪む。 ドアを閉められる前に、ゆう子さんとの距離を一気に詰める。 「俺は、あなたとずっと一緒にいたいです。あなたが留学しようが、海外に行こうが、関係ないです。」 「早良くん・・・」 ぽろぽろと大粒の涙をこぼすゆう子さん。水滴で眼鏡が曇る。 「ゆう子さんの気持ちが聞きたいです・・・」 徐々に距離を詰める。 ゆう子さんは逃げない。 玄関の壁に押し付けて、唇を奪った。 しょっぱいのは、ゆう子さんの涙だろうか。 ゆう子さんは泣き続ける。 弾力のある唇が俺の脳裏を刺激する。 ゆう子さんは深いキスに応えてくれた。
/480ページ

最初のコメントを投稿しよう!