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ゆう子さんと一緒にいられる時間は限られている。
離れても大丈夫なように、今に懸けていると言ったら大げさかもしれないけど、ゆう子さんが望むことは何でもしたい。
死にかけていた心が彼女と関わることで、息を吹き返す。
「何やってるんですか?」
水着姿ではしゃいでいるゆう子さんの元へ向かう。
黒い水着の面積は狭く、それでも完璧なボディラインのせいで、不思議といやらしくは見えない。
まだ水に濡れていない艶やかな髪は、サラサラとゆう子さんの滑らかな背中を滑り落ちる。
大きく口を開けた満面の笑みが自分に向けられて、ギュッと心臓が鷲掴みされる。ゆう子さんのこういう顔を見ると、何度もときめかずにはいられない。
絶対に顔には出さないけど。
「あれ?川原くん、どうしたの?」
ゆう子さんが、俺の隣にいる川原さんに目を向けた。
「あ・・・いや・・・何でも・・・」
川原さんは、なぜか顔を真っ赤にして、言葉を詰まらせた。
「雄聖、どうしたの?」
神崎さんが彼を覗き込むと、ますます赤くなる。
あぁ、なるほど。
口元が自然に緩む。
「神崎さん、川原さんがあなたに何か言いたいことがあるみたいですよ」
と、水を向けた。
川原さんは、何言ってくれてるんだと言いたげな目で非難がましく俺を見たけど、素知らぬ顔をする。
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