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何通の手紙が交わされたでしょう。
秘密の文通は、ニコが大人になっても終わることはありませんでした。
相変わらず年に一度でしたが、ニコにとってはまるで友人のように思えて、なんでも話すことが出来ました。
サンタクロースなんて居ないと言われて泣いてしまったこと、両親とぶつかり合ってしまったこと、好きな女の子のこと…
彼女に、プロポーズをした時のこと。
その度に、サンタさんはお返事をくれました。そう、プレゼントはまだ続いていたのです。
ズルいですって?そうかもしれません、ニコはもう大人なのですから。
彼だって重重わかっています。
だから、自分の娘や息子と靴下を並べることもやめました。それでも、手紙と小さな贈り物は届くのです。
枕の下、コートのポケット、歯ブラシを立ててあるコップの底…ニコだけが気付くことの出来る場所に、隠してあるのです。
毎年、毎年、あちらこちらに。
それを見付ける度に、子供のようにクスクスと笑うニコは、いつの間にかおじいさんになっていました。
父親と靴下を並べるのをおかしがっていた子供達は、すっかり大きくなり、家を出て行きました。
なにがいけなかったのだろう、“忙しい”と言うばかりで、年に一度も顔を見せてはくれません。
そして、サンタさんにあげるクッキーを焼いてくれた妻は、もう…。
一つずつ増えていった木の家は、誰も集うことのないリビングのテーブルの上で“町”になりました。
それだけ、年月が経ったのです。
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