61人が本棚に入れています
本棚に追加
3.
ずびずばー!
雷鳴轟くかの如く、豪快に麺を啜るラーメンさん。
「ふむふむ、スープに黒マー油を浮かべて、コクを出してるわけね。モダンだねぇ」
「ラーメンさん。確かにコクは、十全ですが、肝心のスープの色が濁ってしまって、ぼくは好きにはなれません」
「いつも見た目気にするんだね。これだからメンズは。うん、まあいいよ。ヱンがそう言うなら、ここは一つ星ってことで折り合いをつけようね~」
こうやって彼女はいつもぼくを理解してくれます。人に言えないような、ぼくのやましい秘密を知っても側にいてくれます。
ぼくが腹八分で替え玉をしようか迷っている横で、ラーメンさんがレンゲをどんぶりに見立てて、ちっこいミニラーメンをそのレンゲの中で作って遊んでいる時です。
街のどこかで『カーンカーンカーン』と警鐘が大音量で鳴り響き、店舗の……恐らく上空から剣呑なヘリの轟音、そして強い風が小さなオンボロ店を揺らします。
店内はパニックに陥り、「噂は本当だったんだー。空襲だ逃げろ」と店内の客は三々五々、蜘蛛の子を散らし逃げ始めます。
ぼくとラーメンさんが店舗の外へ出て空を仰げば、遥か上空より次々と小火器を携えた迷彩服の男たちが、螺旋を描きながら、パラシュートで降下して来ました。
やつらです。宿敵コレステロール警察。
降下し終わったその数、凡そ十。多勢に無勢。ヘリ風にラーメンさんの長い髪の毛が靡き、表情を見ればやはり緊張しているようです。
最初のコメントを投稿しよう!