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笠地蔵
黒戌堂プロダクツ
はい、皆さんはじめまして。
古生物学の授業を受け持つ非常勤講師の小松と申します。
えー、今回は地蔵ですね。
古生物の授業ではありますが、まだ地蔵自体は相当数の個体が生存しています。
いわゆる、生きた化石、というやつですね。
人里に降りてくることが殆ど無いので、実際には見たことはなく図鑑などで見たことがある、と言う人がほとんどなのではないかと思います。
主に山道などの人気のない場所に生息しており、一日の殆どを動かずにいることでエネルギーの消耗を抑え、数年に一回程度栄養を摂取するだけでも十分生きていられる、約一万二千年前からほとんどその姿を変えていない生物、それが地蔵ですね。
そんな地蔵ですが最も特徴的な生態として、生まれる前ではなく、生まれた後にその個体としての特徴が決まる、という点です。
例えば……はい、このスライドの個体。
これは俗に苔地蔵、学名ではモスガルサル・メラリウス、苔むした石の棺、という意味ですが、生まれた最初の段階では……この比較写真のような通常の地蔵と全く変わらない見た目です。
しかし……このような湿気の多い地域に移動し、そこで活動を最小限にします。そうすると、長年かけて、周辺の苔を体内に取り込むわけですね。
また……このような首なし地蔵、ニックコルム・メラリウスですが、こちらも生まれたときは……違いが無いですね。
それが……このような慰霊碑ですね。こういうのが立っているような、いわくつきの山に移動した個体は、徐々に首がなくなっていく、もしくは体の一部がえぐれるような形で変形した状態で成長していきます。
昔の人はですね、まー、この現象を霊的なものであるとか、祟りのたぐいであるとか、そういう身近な不吉な事象と結びつけていたようですが、おそらく、周辺の個体と似たような形になることで、天敵からの擬態としている、と考えられています。
まあ、この地に生息し始めた最初の地蔵はどういうきっかけでこうなったんだ、と問われるとまだその辺はわかっていないのですが。
このように、生まれたばかりのときから幼体にかけてはほぼ個体の違いはなく、生体に近づくにつれて特徴が出てくるという、珍しい特性を持っているわけですね。
またこの特徴はその親の個体の遺伝情報には関係ない、と言うこともわかっています。
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