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「俺は近道して帰るけど、お前はどうする?」
しばしの沈黙の後、保憲が晴明を振り返った。式と共に飛んで帰ろうというのだろう。
「皆と一緒に帰ります」
「馬の背に揺られてか……酔狂なやつだ。傷が痛むだろうに」
保憲の言葉に心配げな顔になった博雅に晴明が言う。
「お前の馬に乗せてくれるか」
「いいとも。前に乗って俺に寄りかかるといい」
ぱっと博雅の顔が明るくなった。
「博雅殿!晴明殿!出立の支度が出来ました」
木立の向こうから綱の声。呼びかけられて二人歩き出す。
昇ったばかりの太陽が、赤と金と紫に彩られた晩秋の木々を清らかに照らしていた。
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了
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