約束とひまわり畑

18/22
93人が本棚に入れています
本棚に追加
/175ページ
唖然と立ち尽くす私の肩を叩くと、高橋さんは早々と家の中に入っていった。 玄関のドアが閉じる音が聞こえてくると、楓君がゆっくりと歩み寄ってくる。 私……夢でも見ているのかな? 楓君は地元に帰ったはずなのに。 近づいてくる様を眺める私の目の前で立ち止まると、楓君は私が握りしめていた手紙に気づいた。 「それ、読まれちゃった?」 「あっ……うん」 指差された手紙はいつの間にか力が入ってしまい、皺ができてしまっていた。 両手で皺を伸ばしていると、楓君は恥ずかしそうに口元を手で覆った。 「やべ、だせぇな俺。夏に再会したときにもう一度言わせてって書いておきながら、我慢できずに会いに来るとか」 楓君の言葉に手が止まってしまう。 首を上げると耳を赤く染めている楓君と視線がかち合う。 「ごめん、約束守れなくて。……向日葵に早く好きって伝えたくて、飛んできた」 「楓君……」 手は振り落ちていき、身体中の力が抜けていく。 「夏まで呑気に構えていたら、誰かに向日葵のこと取られちまうと思ってさ」 これは現実? 楓君の気持ちは本当なの? なかなか信じられない私に楓君は距離を縮め、私の両手をギュッと握りしめた。 それだけで心臓が飛び跳ねてしまう中、彼は真剣な面持ちで言った。
/175ページ

最初のコメントを投稿しよう!