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「来てくれてありがとう。……でも楓君が来なかったら、私が楓君の元に行っていたけどね」
鼻を啜りながら伝えると、「もしかしてさっき……?」と呟いた後、噴き出し笑いながら私の身体を強く抱きしめた。
「俺たち、以心伝心し過ぎ」
「確かに」
首だけ上に上げて目が合った後、また笑い合ってしまった。
私はおばあちゃんの、楓君は宗助さんの想いを知りたくてやって来た地で出会った私たち。
なぜかふたりでおばあちゃんたちの思い出の品に触れると、ふたりの過去の記憶を見ることができて、ひとりでは決して知ることができなかったふたりの想いを知ることができた。
偶然だったのかもしれない。
お互い一日でも数時間でもあの日あのとき、体育館裏に行かなかったら出会うことはできなかったのだから。
だからこそ信じたい。
私たちを出会わせてくれたのは、おばあちゃんと宗助さんだったのだと。
ふたりが私たちの幸せを繋いでくれたのだと――……。
八月初旬。
蝉が鳴く夏の暑い日。
私たちはたくさんの向日葵が咲いているひまわり畑に来ていた。
「これだけ咲いていると圧巻だな」
「でしょ? 綺麗だよね」
手を繋ぎしばし向日葵の花に視線を奪われてしまう。
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