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飛行機が飛ぶ音が響く中、楓君はポツリと呟いた。
「向日葵と一緒に見れて、よかった」と――。
思いが通じ合ったあの日から連絡先を交換し、毎日のように連絡を取り合っていた。
そして春になると、また突然楓君が私の目の前に現れたのだ。
春休みの終盤、仕事で家にいない両親に代わり留守番をしていたときだった。
来客を知らせるインターホンの音にドアを開けると、そこには楓君が立っていたのだ。
「え、どうして楓君がここに?」
驚きを隠せない私に彼はドヤ顔で言った。
「内緒にしていたけどさ、この春から俺、東京の大学に通うんだ」
「嘘……本当に?」
目を見開く私に、さらに楓君はびっくりするようなことを言ってきた。
「ちなみに俺が借りたアパート、ここから徒歩五分のところ」
嬉しいサプライズに歓声を上げ、玄関先ということも忘れて抱き着いてしまった。
それから楓君とは時間が合えばいつも会っていた。
会うたびにお互いのことを沢山話した。
好きな食べ物とか、よく聞く音楽とか。映画やドラマの話や、お互いの高校大学のこと。
夏が近づくにつれて私の受験勉強も本格化してきて、楓君にも何度か教えてもらっている。
春から楓君と同じ大学に通えるよう、猛勉強をしているところだ。
「そうだ、これを見せないとな」
ひまわり畑を後にした私たちが次にやって来たのは、おばあちゃんが眠るお墓。
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