僕と喋る猫。

12/14
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
───それから、数年後 春になり、僕は高校2年生になる前の春休みを迎えていた。 身震いするほどの寒さと、 なんの生き物も植物も目立たない冬とは一変して、春は、太陽が照ってポカポカしている。 上を見上げれば青く、澄み渡った空があり、下を見れば、桜や花々の絨毯が広がっている。僕はそんな春が好きで、この頃はいつも気分がいい。 学校でも、充実した日々を送っていた。 部活はサッカー部に入り、この前レギュラーを取ることができた。 また、クラスはコウと一緒になることができ、そのお陰かある程度の友達もできた。今年も一緒になれればいいな。 問題があるとすれば、成績ぐらいだ。 ぐらいって言えるほどの事じゃないけどね。 始業式。 僕はいつものように支度をして、朝ごはんを食べて、家を出ようとした。 相変わらず母は仕事が忙しく、朝は早くに家を出てしまうが、土日には余裕が出来たため、話すことが増えた。 高校2年にもなってこんなことを言うのはなんだが、少し嬉しい。 そんなことを思いながら 「やべ、早く行かなきゃ。」 と、慌ててドアノブに手をかけた。 すると、ふと、右手に付けていた紅いネックレスに気づいた。 あれは昔、クロから貰った宝物だ。 長さを変えて、今はハンドネックレスにしている。 「クロ。俺は笑顔で過ごしてるよ。」 そんなことを考えながら、いつものように小さな声で 「いってきます。」 と、言って家を出ようとした。 その時 「いってらっしゃい。」 後ろから、声がした、ような気がした。 「、、、クロっ!?」 ビックリして振り返ったが、やはりそこには誰も、何もいなかった。 「まぁ、そーだよな、、、よし。行こう。」 無いものはない。 今あるものに、感謝しろ。 そう思いながら僕は、俺は、 勢いよく家を飛び出していった───
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!