僕と喋る猫。

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タン、タン、タン、とリズムよく階段を降りていく僕の横を、ゆったりと付いて来るクロ。 これも、いつもの日常だ。 クロは僕が家にいる時、いっつもついて来る。前はトイレにまでついてきてびっくりしたことだってある。 「じゃあ、行ってきます。」 「うん。いってらっしゃい。」 おはようから行ってきますまで。 おかえりからおやすみまで。 いっつも僕についてくる猫、それがクロだ。 名前の由来はその名の通り、真っ黒の体をしているから。 珍しいのは喋る猫、って言うこと。 珍しいのレベルじゃ無いけどね。 こんな非日常が日常になったのはいつからだったっけ。 ほんとにいきなりだった記憶がある。 確か、、、 ──2年前 「じゃーなー、シュン。また明日!!」 「うん!」 それは、小学2年生のころ。丁度、8歳の誕生日の時だった。 放課後に親友のコウと遊んで、5時のチャイムが鳴る頃にちゃんと家に帰った記憶がある。 普通の小学生だったら、今日は誕生日パーティーとかをしてるんだと思うけど、うちは違かった。 僕が物心ついて間もない頃、お父さんがいなくなっちゃって、お母さんは毎日僕が寝るまで働いてたから、時間がなかったんだ。 家に帰ってくるとご飯が置いてあって、隣にはラッピングされた箱が置いてあった。誕生日プレゼントだった。 僕が前から欲しがっていたものだったから、嬉しかったけど、やっぱり少し寂しかった。 「早くお母さん、帰ってこないかな。」 思っていることが口に出た時、後ろからふと声がした。 「やっぱり、寂しいよね。僕でいいなら、一緒にいるよ。」 「え!?」 びっくりした。後ろを見ても誰もいなかったからだ。 「だ、誰?」 怖くなってキョロキョロ周りを見ていると 「そっちじゃないよ。下だよ、下。」 と、言われて慌てて下を見た。 すると、そこには真っ黒な猫がちょこんと立っていた。
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