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改めて標的との距離を目視で確かめる。この距離で外しようはないな。
姿勢に入るため身を屈めようとした時に俺は背後の小さき刺客に気付いた。
胡乱(ウロン)げにこちらを見詰める二つの眼光、此奴めどこから入った。
出入り口は一つ、固く閉ざされ隙間はない。他に上ってこれそうな所は見当たらないが、高い所が得意な猫の事だ。俺が予想だにしない所から上ってくるのだろう。
しかしあれだけ痩せ細っていた子猫は昨日今日で随分元気を取り戻したご様子。有り余っているのは分かったが邪魔はしてくれるなよ。
俺はライフルを構えカーテン越しに見える標的の頭部を慎重にポイントへ入れる。
深く吸い込んだ息を吐き、風が強く耳を切り少し肌寒く感じうる暗黒の下、軽く引き金を引いた。
銃口から放たれる強力な廻旋を加えられた鉛は、空を切り、ガラスやカーテンの障壁をも貫き、寝返りを打った男の手前三センチに風穴を開ける。
ハズした…
遊底をスライドして次弾を装填するが流石に標的も素人ではない、既にベッドには存在せず部屋の中を駆け巡る。
銃口を窓から窓へ往来させるが易々と姿は現さず、次第に焦りが募る。
下層にて揺らめく明かりが視界を刺激し銃口を向けると、スコープ越しに見えるシルバーのセダン。
前情報で標的の所持している車だと理解した。
車で逃げるつもりか。
俺は車の進行方向に合わせ屋根から屋根へと飛び移り狙撃体勢に入る。時速何十キロで進行する物体に正確に着弾させるのは容易ではない。加えてスモークの効いたフロントドアガラスで運転手は見えない。
そうしている間に車は徐々に加速し距離が開いていく、俺は狙いもそこそこにコーナーに差し掛かった所で素早く前輪を狙撃すると車はスピンし勢いのついたまま電柱へ突っ込んだ。
また次弾を装填し這い出てくる所を殺る。
しかし待てども待てども標的は姿を現さず、もしかすると今の衝撃で失神しているのかもしれない。
あまり時間を掛けると野次馬が集まり殺りにくくなる。
俺はライフルを置いて降りると拳銃に持ち替えて沈黙する車に近付く。
ガラスにヒビが入っているが、こちらからはそれ以外で主だった外傷はなく、まだ中を伺い知ることが出来ない。通例は時間を掛けて接近するものだが逸る気持ちで俺は不用意に近付き過ぎ、ガラスを突き破って飛来する弾丸が容赦なく襲い掛かった。
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