ヒーローであり続ける男

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 俺の名前は赤覇悠熾(あかはゆうし)。魔討戦士エルビオンのエルビオンレッドだ。  日本に襲来したファングアントと呼んでいる異世界の侵略者から人々を、日本を護るために日々戦ってきた。なぜ過去形なのか?それは、今この日本はファングアントを全滅させたことで平和になっているからだ。ならヒーロー関係ないだろって?確かにそうだ。平和なんだからヒーローなんていたってしょうがない。それは重々承知している。しているがヒーローだと言わざるを得ない事情があるのだ。 「ねえ・・・悠熾」  かつての仲間、エルビオンホワイトだった白浜美兎(しろはまみう)が呆れたように話しかけてきた。 「ん?なに?」 「いつまでそんなカッコしてんの?」  そう・・・なぜか俺だけ変身が解けず、今日までずっとエルビオンレッドのままなのだ。 「悠熾は過去の栄光にすがるタイプなのね」  かつてのエルビオンピンク、桃笠咲羅(ももかささきら)は酷いことを言い出した。 「過去の栄光にすがってるわけじゃないよ」  俺だってみんなみたいに変身を解いて普通の生活を送りたい。でも、なぜかわからないが俺だけ変身が解ける気配がない。 「どうだか。いつまでもみんながエルビオンレッドをもてはやすと思ったら大間違いだぞ」  エルビオンブラックだった黒間晶織(くろまあきおり)まで酷いことを言い出した。 「好きでこの格好のままでいるわけじゃないってば」 「俺は少し羨ましいけどな。いつまでもヒーローでいられんだろ?」  エルビオンブルーだった青佐聖(あおさひじり)は呑気なことを言う。 「そんないいもんじゃないよ。この姿のままになってから食べ物も飲み物も一切口にできてないよ」  せめて頭装甲くらいとれるかなと思って試したけど・・・結局とれず。 ヘルメットじゃないんだなと改めて認識した。
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