ヒーローであり続ける男

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「お腹減らないの?トイレは?」  エルビオンイエローだった黄坂真瑚(おうさかまこ)は至極もっともな質問をしてくる。 「不思議と腹は減らないかな・・・。トイレに行きたいとかもない」 「その姿でトイレは行けませんよね・・・」  エルビオングリーンだった緑橋綾太(みどりはしあやた)が控えめにツッコミしてきた。  確かに、戦闘中にトイレになんて行ってられないし、そもそも装甲は取り外し不可能。普通の生活に必要な行動はすべて無意味だ。飲食はできないし、トイレは行けないし、眠くなることもないので寝ても意味がない。便利なんだか不便なんだか・・・。 「リーダーかわいそう・・・好きなもの食べれないなんて」 「こいつはもともと好き嫌いなんてなかっただろ」 「何を言う!俺だって好物の一つや二つや三つや四つ・・・」 「そんなにあったか?」 「あるよ!失礼だなあ!」  晶織は本当に意地悪だなあ・・・。 俺に恨みでもあんのかな? 「あの・・・そろそろ本題に移りましょうよ・・・」  綾太がおそるおそるみんなに声をかける。そういえば世間話をするために集まったんじゃなかったんだった。うっかり忘れてた。 「本題って何?」 「えーと・・・みんな知っての通り、俺だけ変身が解けてないでしょ?その事でボスから話があるみたいなんだ・・・肝心のボスがいないけど」  なんか準備があるとかないとかで遅れるって言ってたけど、さすがに遅いな。 「本当に来るの?私仕事休んでここに来てるから、来ませんでしたじゃ困るんだけど」 「レッスン休んできたから私も困るわ」 「ボクはちょうど非番だからよかったけど、また今度ってなると休まなきゃならなくなっちゃうよ」 「オレもー。仕事があったのに急に呼び出されて困ってるんだよ」 「僕は学校があるので・・・」 「本当に今日であってるんだろうな?みんなお前みたいに暇人じゃないんだぞ」  そう・・・みんな普通の生活をしている。仕事をしたり学校に行ったりしているから忙しい。 俺はといえば内職でちまちまお金を稼ぐ日々。この格好でできる仕事といえば、内職かヒーローショーぐらいなものだ。みんなから見れば確かに暇人かもしれない。 「俺だって明日納品の封筒作りが残ってるのに呼び出されて迷惑してるんだよ」 「内職してたんだ・・・。てっきり日永一日ごろごろしてると思ってた」 「俺だって元に戻ったときのために仕事くらいするよ」
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