烈姫 おまけ

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 頬や肩、脇腹、太腿からぽかぽかと温もりが伝わってきて心地いい。  起きたくない。もう少し眠りたい。ああ、どうしてこんなに気持ちいいんだろう。そうか、夢か、夢を見ているからか、などと考えていたら目が醒めた。  随分ぐっすり眠った。壁の時計を見上げると、もうとっくに昼を過ぎている。見慣れない時計だ。ここはどこだ。目が醒めたというのにどうして右半身はこんなに温かいのだろう。ゆっくりと覚醒していくに従って自分の状況を思い出す。  そうだここは……。そして隣には……。  伏見はそっと顔を上げる。目の前には、薄く唇を開いて静かに寝息を立てている鴨川の横顔があった。    高い鼻筋。骨ばった頬。伏見は息を止めて男らしい端正な横顔を見つめる。好きになってしまった、諦めなければいけないと思った、想いが募ってどうにかなってしまいそうになった、どうしようもなく愛しい人が真横で眠っている。  夢じゃない。紛れもない現実。 「悟……」  そっと呼んでみた。愛しい人の名前。 「ん……っ……」  鴨川の腕に力が入り、肩をぐっと抱き寄せられる。瞼がピクリと震えゆっくりと開いた。 「あ……、伏見さん、おはようございます。んぁーよく寝た。何時だ? げっ、もう昼ですね。伏見さん、よく眠れましたか?」
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