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「間違いなさそうですね。おいで、なにか美味しいものを買ってあげよう」
伏見が笑いかけ手を伸ばすと、黒猫はもう一度ニャアと鳴いてふいと横を向いた。そのままスタスタと店の方へと向かっていく。
「おい、待てよ」
鴨川とふたりで追いかけると、黒猫は店の扉の横に作られた小さな猫ドアから中に入ってしまった。
「ああ……入ってしまった……」
「なになに、スナック青龍洞? あれ? 営業中みたいですよ。それに、ほら」
鴨川の指差す先を見ると、営業中と書かれた札の横に、なんとも独創的な文字で『お節あります』と書かれた張り紙がしてあった。
「おせち……」
「伏見さん、ここ、入りましょうか。お節が食えるなんてラッキーですよ」
「ええ、そうしましょう」
鴨川がステンドグラスの嵌められた古い扉を開ける。
カランカランと木のこすれ合う音がして、『いらっしゃい』という景気のいいママの声が聞こえた。
烈姫 おまけ 終
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