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「充樹を一人にする訳にはいかないし……困ったわねぇ」
困った、と言いながらも母親がニヤニヤしている。そうか、これが秘密兵器か!
「だっ、ダメだっ、そんなのっ……春生さんだって忙しいだろうし、そんな事っ……」
「なら、お母さんからお願いしてみましょうか? それなら春生さんも断れないかもしれないわよ?」
「そっ、それもダメだっ!」
そもそも春生さんがウチに泊まりに来るなんて……想像しただけでドキドキする!
「充樹がダメだって決めつける事じゃないでしょう? 春生さんはいいよって言ってくれるかもしれないんだし」
「ででででも、だってっ……!」
「聞くだけ聞いてみたら?」
母親の言う事は最もだ。それにさっきの母親の体験談が頭を過ぎる。会いたいと正直に言えなかっただけで、悲しい結末になってしまったあの話を。
春生さんからいつ連絡が来てもいいように、家の中でもお風呂の時以外はスマホを肌身離さず持っていた。ゴソゴソとポケットからスマホを取り出すと、母親がワクワクしたように画面を覗き込んでくる。
「みっ……見ないでよ!」
その母親に背中を向けるようにして、チャットアプリで春生さんの個人チャットの画面を開く。何て切り出したらいいのかも解らなくてすぐに文章を打ち込めなかったが、母親がコソコソと俺に「まずは来週末の予定を聞くのよ」とアドバイスをしてくれた。
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