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厭な感覚に、バッと背後を振り向けば、案の定、ずっと付き纏っていたヤツがニヤァッと気味の悪い笑い顔をしながら、コンビニで見かけた時よりも一回り大きくなり、宙に浮いている。
[オマエ、神社ノ]
[コドモ]
[オマエ、弱イ!!]
ーー 答えてはいけませんよ
いつもいつも、耳にタコができるほど口煩く言うアイツの声が頭をよぎる。
[オマエ、ウマ……イ]
ブワッと突風とともに徐々に重くなっていた空気を全身に叩きつけられる。
「ゲホッ、ゴホッ」
耐えきれない臭いと空気の重さに思わずせき込めば、しつこい目の前のヤツが嬉しそうな表情を浮かべ、口元を歪ませた。
[喰ウ、喰ウ、喰ウゥゥゥ!]
ゴォォ!と大きな音を立て、巨大化した図体でヤツが俺のほうへと向かってくる。
チィッ、と大きく舌打ちをするものの、舌打ちしたところで状況が改善する訳でもない。
「あー!! もう少し貰っとけば良かったぁっ!」
ポケットの中の爺ちゃんの札をヤツに投げつけながら小さく呪を呟き、少しでも家に近づこうと駆け出すものの、あと数メートルというところで、バリッと大きな音を立てて、札の術が壊される。
「おい、嘘だろ! 爺ちゃんのじゃっ」
驚きで動きが止まった俺の目の前に、無情にもひらり、と戻ってきた札を手にし、俺は愕然とした。
「てこれ、父さんのじゃん――ッ?!」
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