真っ黄色の首輪

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僕はよく結婚相談所に行く。 たとえばその相談所のあるビルを通りすぎるだけでも、エレベーターで相談所のあるフロアに行くだけでも、ついうっかりビルの公衆トイレをつかうだけでも、僕にとっては結婚相談所に行くことになる。 その結婚相談所に興味があるから、会社から家への通りすがりにあるそのビルが気になる。たまに、営業職の友人が顧客の玄関の様子を気にするみたいに、僕はその結婚相談所の玄関が気になってそれを見にエレベーターに乗る。 トイレは、、ホントにうっかり便宜上使うときがある。大抵結婚相談所の玄関までで引返す僕にとってそこは、そのビルとコミュニケーションをとるファンクションだと思う。 もちろん僕はその結婚相談所の会員で、そこに行けば専門のカウンセラーが悩み相談をきいたり、マッチングする女性のプロフィールや、イベント案内や、お茶などをだしてくれる。相談所のパソコンを使って気になる会員を検索したり、会員の女性にメッセージを送ることもできる。 その必要は、僕にはほとんどない。 既に気になる女性がひとりいるから。 彼女も会員だけれど、ログイン履歴は、僕と出会ってからほぼ全くない。 会員には皆担当のカウンセラーがいて、会員のその女性と初対面デートをしたことを僕の担当も彼女の担当も知っている。 僕も彼女もそのデート以降、相談所に関する、または相談所が把握する内容の事柄に全く係っていない。 彼女は、僕のことを生涯のパートナーとして見ることができないと、頻繁に僕に伝えた。
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