あなたの側で

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
普段クールなあなたが、甘い声でわたしを呼ぶ。わたしを抱いて頬を寄せる。あなたのまっすぐで柔らかい前髪がくすぐったい。わたしの鼻にあなたの鼻が近づく。長い睫毛の奥の澄んだ瞳がわたしを見ている。人懐こい笑顔。いたずらっ子みたい。普段からそうなら、もっとみんなと仲良くなれるのに。本当、あなたは不器用な人。 「ほんと、おまえって可愛いのな。」 わたしの胸が早鐘を打つ。鼻と鼻がくっついて、あなたの睫毛が触れた気がした。あなたはわたしをベッドに下ろすと、わしっと、わたしの頭を撫でながら目を細める。あなたの瞳に映るわたしが見えなくなって、わたしは少し安堵する。 「ん。」 あなたは、自分が横になると、布団を持ち上げてわたしを呼ぶ。わたしはあなたが持ち上げてくれた布団に、体を滑り込ませる。あなたはわたしの背中を撫でながら目を閉じる。しばらくして、その手が止まると、あなたの寝息が聞こえてくる。わたしは、あなたの手の重さとぬくもりを感じながら、あなたの匂いに包まれて、あなたの胸の中で眠りに落ちる。 人間は欲深い。あなたの猫好きを知って、猫になりたいと願った。それが叶ったのに、今は、猫であることをこんなに苦しく思っている。初めは、あなたを見かけるだけであんなに嬉しかったのに。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!