第2章

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葉月ちゃんと湊人くんの言い争いの声に紛れて、あたしは隣の席の歌音ちゃんに話しかける。 「おはよ、歌音ちゃん」 「お……おはよう」 二日前くらいから、歌音ちゃんは挨拶を返してくれるようになった。 こっちを見ることもなく、とても小さな声だけど、それでも私はすごく嬉しくなる。 少しづつ少しづつ仲良くなれるように、私は歌音ちゃんに毎日話しかけていた。 「また今日も雨やーん!雨だと髪の毛ボサボサになるやんねー」 「靴も靴下もびしょ濡れで、気持ち悪いー!」 ひときわ大きな声で教室に入ってきたのは、あの、4人組。 頭には、今日もやっぱりお揃いのピン。 せっかく口元を緩ませてくれていた歌音ちゃんも、途端にまた深く下を向いて、緊張した顔つきになってしまった。 「しかもさー、最近雨続きやけん、今日も『りんのしま』見えんやったねー!」 4人組の中でもリーダー格の女の子、山瀬愛姫ちゃんが、聞きなれない言葉を口にして、自分の席の椅子に座る。 ちなみに『愛姫』と書いて、『あいら』と読むらしい。 最近よく話題に出るように、このクラスでも、漢字を見ただけでは何と読むかわからない名前はたくさんある。
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