第2章

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「美桜ちゃんの言う通り、『りんのしま』は島の名前だよ。でも、本当の名前は『りんの島』じゃなくて、『たから島』って言うんだ。『宝』と『良い』って字で『宝良島』」 太一くんは、私の方に向けていた顔を、窓の外に向ける。 外は相変わらずの大雨で、時折ゴロゴロと音を立てながら、遠くの方に稲妻が見えた。 「空が晴れてて、もっと空気が澄んだら、ここからも宝良島が見えるんだけど……。そういえば、もうずいぶん見てないなぁ」 島があるであろう方角を見ながら、太一くんは言うけれど、この大雨じゃいくら目を凝らしても、いつも見えるはずの海でさえ見えない。 「それで、その『宝良島』が、どうして『りんの島』なの?」 島の方を見るのを諦めて、太一くんの方を見る。 「あ、『りんの島』の話だったよね」 やっと真相に辿り着くと思って、更に太一くんの方に身を乗り出す。 だけど、やっぱりまた始業のチャイムに邪魔されて、私の好奇心は満たされないまま、笑顔の先生の登場となってしまった。
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