第2章

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その日は結局、どこかみんな浮かれた空気のまま、一日が終わったような気がした。 「りんはね、今年の春に島で大怪我して、ずーっと入院しとってね。5年生になってからこっちの学校に来るのは明日が初めてやけん、みんな楽しみにしとるとよ」 帰り道、まだ興奮を引きずったままの葉月ちゃんが教えてくれた。 転校してから1週間、葉月ちゃんや太一くんみたいに仲良しの子もできたし、クラスにもだいぶ慣れてきてた。 今更『分校の子』なんて言われて、また自己紹介から始めなきゃいけない事に、多少の面倒くささを感じてしまう。 興味があった『凜人くん』とやらに会うのも、何だか気が進まなくなっちゃったな。 朝から降り続いている雨も、一向に弱まることはない。それどころか、なんだか、より一層強まったように感じる。 明日海が荒れて、船が出なかったらいいのにな。 雨降りなのをいい事に、傘で顔を隠しながら、ずっと話を聞いていたから、葉月ちゃんもきっと私の憂鬱な気持ちに気づいてはいないだろう。
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