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「今日、りんの島見えるねー!」
「りん、早う来んかなー」
普段は始業ぎりぎりに来ている愛姫ちゃんたちだけど、今日は早くから学校に来ている。
教室の窓からも、昨日までは見えなかった島が見える。
あんなに大きく見える島があったなんて、全然知らなかった。
「おはよう、美桜ちゃん」
席に着くと、太一くんが話しかけてきた。
「おはよう、太一くん」
なるべく、心の中で重く感じている感情に気付かれないように、意識した笑顔で太一くんに目を向ける。
私の苦労の成果は報われたようで、太一くんも普段と変わらない様子だ。
「宝良島、今日は綺麗に見えるね。分校の子たちが来るのも、楽しみだよね」
せっかく頑張って作った笑顔も、島の事を話題に出されて、少し崩れそうになる。
だけど、島の方に目を向けてくれたお陰で、太一くんには気付かれなかったようだ。
「そうだね。本当に楽しみだよね」
私はそう言ったけれど、島に目を向けることはできなかった。
島を見てしまうと、ママの泣いている顔を、思い出してしまうから……。
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