第3章

3/21
前へ
/199ページ
次へ
「みんな、お待たせー!凜人くんと星南(せいな)さん、来たよー!」 先生の大声と同時に、みんなも一斉に歓声を上げる。 今の時間、ベテラン先生率いる4年生は体育の時間で体育館にいるので、怒られる心配がない事をみんな知っている。 とても気分は乗らなかったけれど、やっぱり興味には勝てなくて、机の端のキズに向けていた目を少しずつ上げていった。 教卓の横に、青い上履きの両足と赤い上履きの両足が見えた。 みんなの歓声も全然耳には入ってこなくて、ただ自分の鼓動だけが大きく聞こえる。 一度だけぎゅっと目をつぶってから、思い切ってぱっと顔を上げる。 「久しぶりーー!!みんなーー!!」 みんなの歓声に負けないくらい元気な声。 スラリと長い手足。 冬になろうとしているのに、まだこんがりと焼けた肌。 意思の強そうな上がり眉と切れ長の目。 ニッと笑う大きめの口。 今日の天気に負けないくらいのカラッと明るい笑顔に、私は今日の朝からの出来事を一瞬忘れてしまいそうになる。
/199ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加