第3章

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ずっと目が離せなくて、自分でもそうするつもりはなかったのに、私は凜人くんを見つめたまま、動けなかった。 想像していた、王子様みたいに優しそうなタイプではない。 テレビの中のアイドルみたいに、ニコニコと愛想を振りまくタイプでもなさそう。 だけど、一度見たら絶対に忘れられない意志の強そうな目を見ていると、人を引き付ける魔法にでもかけられたみたいだ。 目が離せない。 私の強い視線を感じ取ったのか、凜人くんがこっちを見る。 必然的に目が合って、私はまたぱっと机のキズに視線を戻す。 見つめていた事に気付かれませんようにーーー。 カァっと熱くなった顔を、右手でパタパタと扇ぎながら、ふと賑やかだった周りが静かになった事に気付く。 不思議に思って顔を上げた時、目の前に凜人くんが立っているのに驚いた。 「美桜、オレ清宮凜人!『りん』って呼んでいいけん!」 さっき遠くから見たばかりのあの明るい笑顔のまま、突然呼び捨てで名前を呼ばれて、右手を差し出される。 うまく回らない頭の中で、条件反射的に差し出された手に手を伸ばしかけた時、誰かが先に凜人くんの右手に手を掛けた。
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