第3章

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「凜、初めての人を呼び捨てで呼ぶって失礼やない?握手もダメ。美桜さん困っとるよ」 凜人くんの隣に立っていた女の子だ。 今まで凜人くんの話ばかり聞いていたけど、そういえば分校には5年生は2人いるって言ってたな。 「美桜さん、私、秋山星南。『せ・な』じゃなくて『せ・い・な』やけんね」 気が強そうで、大人びた女の子だ。笑顔のはずなのに、目が笑っていないような気がする……。 「凜があんたの名前を知ってたのは、先生に転校生が来たって聞いとったからよ。よそ者なんやけん、凜には近づかんでよね」 星南ちゃんはスッと顔を近づけて私を睨みつけると、周りに聞こえないくらいの小さな声で言った。 不安を抱えたまま転校してきたけれど、初めからみんな優しく受け入れてくれていたから、そんな事を言われるなんて考えもしていなかった。 突然向けられた敵意に、思わず体が固まる。 クラスのみんながこっちを一斉に見ている。 いつも通りのみんなの顔のはずなのに、本当はみんなも私を拒否しているような、そんな錯覚に陥る。 太一くんも、歌音ちゃんも、葉月ちゃんも、湊人くんも、本当はずっと私の事を『よそ者』だと思っていたままだったんじゃないだろうか。
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