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お好み焼きを食べてお皿を洗い終えると、奏斗がコートと鞄を手に取った。
「二人に会えて楽しかったよ。
お好み焼き美味しかったって律君に伝えてね。
じゃあ、遅くならない内に帰るよ」
「えっ、泊まっていかないのか?」
「うん。
せっかく遠くからお兄ちゃんに会いに来たんだから、明日はちゃんと付き合ってあげなよ」
当然のように奏斗が泊まると思っていたから、びっくりして反応が遅れた。
「おやすみ。また来週」
唇にチュッとキスをして、奏斗は帰ってしまった。
土日とも奏斗と過ごせないなんて、付き合ってから初めてだ。
ぼんやりしながら部屋に戻り、ぐっすり寝ているチビ達を見た。
いつもより人数は多いのに、何故か寂しく感じて泣きそうになる。
はぁとため息をついた時、響がモゾモゾと動いて目を開けた。
「兄ちゃん…」
「どうした?お腹空いたのか?」
「ううん。
ねー、かなちゃんは?かなちゃんは、どこにいるの?」
隣にいたはずの奏斗がいないから、少し焦っているようだ。
「帰ったよ」
「帰った?なんで?」
「さあ……。
二人に会えて楽しかったって言ってたよ」
響は俺をじっと見た後、再びベッドに寝転んで頭から布団を被ってしまった。
たった1日でこんなになつくなんて……。
俺は、布団の上から頭をポンポンと撫でて、拗ねてしまった響の機嫌をとる。
でも、ちょっと嬉しい。
自分の好きな人を家族も好きになってくれたっていう事だから。
「明日は兄ちゃんが1日遊んでやるから、どこに行きたいか考えとけよ。
母さんには夜までには送るって言ってあるから」
「……分かった」
小さな声が聞こえた。
この時の俺は自分の事に精一杯で、響の気持ちになんて全く気づいてなかったんだ。
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