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あれは……確か、そう、『ヤマシロ』君だ。
前にイタリアンレストランで少しだけ話した彼だ。
あの時も思ったけど、やっぱり目立つ。というか、何故か人目を引くんだ。
普通のスーツを着て、髪型もその辺にいる若者と同じなのに。
ちょっとうつむきながら、コンビニに入っていった彼を目で追う。
あれ?
頭で考えるより先に体が動いていた。
俺は用もないのに、コンビニの入り口に立っていた。
これじゃあストーカーみたいじゃないか。
そう思って引き返そうとしたら、店員ににこやかに『いらっしゃいませ』と声をかけられてしまった。
しっ。声が大きいよ。ヤマシロ君にばれるだろっ!
心の中で文句を言いながら、渋々店に入る。
お菓子コーナーでガムを手に取りながらこっそりヤマシロ君を探すと、売り物のハンドタオルを触りながら何か考え混んでいた。
気づかれてなくて良かった。
安心したのに、がっかりしている自分に驚いた。
俺がすぐに気づいたように、彼にも気づいてほしいなんて思ってしまったから。
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