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「もしもーし、奏斗君?」 いきなり大きな声で呼ばれてびっくりする。 「はい。松永さん、酔ってます?」 「ちょっと飲んだだけだよ。 そうでもしないと電話する勇気がなくてさー」 あっ、すみませんと謝る声が聞こえる。 どうやら歩きながら電話をしているようで、誰かにぶつかっては謝っているみたいだ。 「大変そうなので、明日にでもかけ直しましょうか?」 「明日? そうそう、明日空いてるかなって思って。昼間、奢ってくれるって約束したよねー」 まさかそんなにすぐとは思ってなかったので戸惑っていると、綾ちゃんに肩を叩かれた。 ジェスチャーで電話を貸してって言われて、何となく渡してしまった。 「初めまして、私奏斗の姉の綾音(あやね)と言います。 いきなりなんですが、あなた明日はお時間ありますか?」 「奏斗君のお姉さん? は、初めまして、わ、私は松永 大夢(ひろむ)と申します。 大夢とは大きな夢と書きまして、私の今の夢は奏斗君ともっと親しくなることでして……」 酔っぱらって声が大きいからか、直接話してないのに会話が全部聞こえる。 この人何言ってるんだ……。 「あ、はいはい。詳しいことは明日聞きますが、奏斗に会いたいんですよね?」 「はい!」 「じゃあ、明日A駅の北に朝8時に来て下さい。汚れてもいい、動きやすい服装でお願いしますね」 「はい!」 「じゃあまた明日」 勝手に話を決めて、綾ちゃんは満足そうに電話を切った。 「えっ、何で?」 「二人で会いたくないんでしょ? じゃあ明日手伝ってもらって、お昼でも奢れば約束も果たせるじゃない」 「あれ、なんで奢る事分かったの?」 「声大きすぎて全部聞こえてたよ。 あんた困った顔してたから口出しちゃったけど、迷惑だった?」 ちょっと困ったように聞かれて首を横に振る。 綾ちゃんってこんな人だったかな? あまり人と関わらないようにしてるのかと思ってた。 「助かったよ。 悪い人じゃないんだけど、強引て言うか、ぐいぐい来るのが苦手でさ」 「なら安心した。 そうそう、明日8時前には出るからね。 あんたも動きやすい服装してね。 じゃあ、寝るわ。おやすみー」 「うん、おやすみ」 姉を見送った後、シャワーを浴びるために浴室に向かった。
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