夏の終わりに起きた出来事‥その全て。

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「何してるの?」 背後から、そんな声をかけられたのは 深い青に染まる湾に突き出した、巨岩の上に座りこみ 一人ぼんやり、釣り糸を垂らしてた時。 趣味で楽しむ釣り人の多い、さびれた海辺の田舎町だけれど この場所を知ってる人間は、自分以外ほとんどいないはず。 だから、声の主は、顔を見なくてもわかった。 「釣り」 振り向かずに、オレは答える。 「だろうね。見ればわかるよ」 「じゃ聞くなよ」 足下に広がる、群青の海原… 見つめ続けてるオレの頬のそばで 制服スカートの裾の、紺色が揺れた。 「…聞きたいことがあったから来たの」 「何?」 視線をあげれば、きっと 海風になびく、長い黒髪が目に入るのだろうけれど 見たくないものは見ない、という主義のオレは あえて顔を動かさない。 「この前、アンタのぞいてたでしょ?うちの、納屋」 「…のぞいてねぇけど…」 相手は強気だった。 …昔から、そう。 近所に住んでて、ガキの頃から見知った仲だけれど …というか、こんな小ぢんまりした田舎じゃ、住人のほとんどが顔見知りなわけだけど そんな狭い社会の中で この女は、常にオレのことを尻に敷き続けてきた。 それは高2になった、今でも変わらない。 何がどう偉いのか知らないが 本日も女王様気取りの、この態度。
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