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妹とよく似た面影。
だけど、よく見ると、ずっと線が細くて、儚い印象の。
その黒い瞳が、オレを見つめたまま、ほんの少し、ほほ笑む。
〝なんだか疲れちゃって…ちょっと…イヤになっちゃった〟
今にも、海の藻屑のように消えてなくなってしまいそうなほど弱々しい声で
泣いてた言い訳でもするみたいに、そんなこと言うから
その瞬間、理解した。
あぁ全部、気づいてんだ。
この人は、知ってしまってるんだ…と。
夕焼けに染まる海面と、淡い色の空を背景に
ただただ、悲しみに暮れる笑顔…
オレは夏祭りのあの晩、自分の頬に触れた、柔らかな指先を思い出してた。
自分にできることがあるなら、何でもしたかった。
この切なくて美しい人をなぐさめる方法が、あるのなら‥‥
強風にあおられた相手の体が、フラリと揺れて
そのまま
崖の端から転げ落ちていってしまう恐怖に、オレは駆られる。
思わず伸ばした指先で
その人の肩をつかんでた。
包み込むようにして抱きしめても
抵抗なんてされなくて
ただ、オレの腕の中で、震えながら声を殺して嗚咽するから…
強く強く、力を込めた。
きつく…つぶれるほど…その体を……
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