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~・沈黙・~
その年一番の 寒い寒い
雪が積もった冷え込んだ朝―――
寒さのせいか 痛みでいつも以上に
キリキリ悲鳴をあげる膝を持ち上げ
すっかり折れ曲がった腰を支え
今日も小さな影がやってきた
まだまだ暗い空から
止めどなく降り続ける雪が
今じゃほとんど使われていない
丸い笠と 細い背の簑を
白く色づけていく
膝まで入る足下を見つめ
肩を大きく上下させ 荒い息を吐き
声にならぬ声で 何かを呟く
静かな静かな朝
杖についた鈴だけが
暗い道にチリリと
小さき声を出していた
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