河原の積み石

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 背筋が冷たくなるような声がどこからともなく響いてくる。そして、聞こえたかしも不気味だ。  石? 石というのは、そこらに積まれている石のことだろうか。  それを取ったり崩したりしたら、外が待っている?  ふいに歌詞の意味が意識に沁み込み、俺はさっき崩した石を、すでに積まれている石を崩さないよう、慎重に元の石の上に積み上げた。  暗がりが元の明るさに戻り、うっすら見えていた生き物らしきものは見えなくなった。もちろん声ももう聞こえない。  その後は当然釣りどころではなく、俺は慌てて…だけど河原の石だけは崩さないよう、急ぎながらも忍び足でその場を離れた。  それでもずっとこのことは気になり、数日後、改めて河原に行ってみたのだが、その時はにもう、積まれている石は一つもなかった。  一応家族や友人にも、河原で石が積まれているのを見たことがあるか聞いてみたが、誰もそんな光景は見たことがないという。  あの日の積まれた石は何だったのか。あの時、河原では何が起こっていたのか。もしうっかりと、もっとたくさんの意思を崩してしまっていたら、俺は…いや、俺だけじゃなく、多分もっと広い範囲に何が起きたのか。  知る術もないし知らなくてもいいけれど、今後、釣りに行った河原で積まれた石を見つけたら、あの暗がりを二度と開かないよう、決して意思を崩さないように行動しようと思っている。 河原の積み石…完
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