河原の積み石

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河原の積み石

 釣りにはまり、近所の川によく行くようになった。  最初の内は釣れても釣れなくてもよかったが、段々釣りたいという欲が出てきて、思うような結果が出ない時は、上流の方へ足を延ばすようになった。  幸いにも河原は広く、道具を持っていても歩きやすい。だが不思議なことに、途中から、やたらと周辺の石が積まれているようになった。  こんな信仰が土地にあるなんて聞いたこともない。だから子供の遊びだろうと思ったけれど、辺り一面、大きなものや小さなものを組み合わせ、なるべく高くなるよう積まれた石が並ぶ光景は、見ていて気持ちのいいものではない。  子供が積んだ石を鬼が崩す賽の河原というのがあるが、あれはこういう風景なのだろうか。  なんとなく寒気を覚えながら進んでいた時、釣り竿が積まれた石に当たった。  ころりと、一番上の小石が転げ落ちる。その途端、石の後方がいきなり暗くなった。  驚き、後ずさった瞬間、別の石が崩れて落ちた。その背後も同じように暗くなる。でもただ暗いだけじゃない。暗がりの奥に何がぼんやりと存在しているのだ。  微かに見える、それは生き物のようだった。ただ、生き物だとしたら、大きさがあまりに大きすぎるし、そもそもさっきまで何もいなかった場所に、どうしてそんなものが現れたのかが判らない。  ただただ戸惑い、暗がりを見つめる。すると、川のせせらぎで聞き取りにくいが、微かに歌のようなものが聞こえてきた。 「石、取っておくれ。石、崩しておくれ。石、なくしておくれ。そしたらお外が待っている」
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