Episode 05. ストロベリー・フィールズ

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「ま、せいぜいがんばって、俺の後ついてきなよ」 春の日差しに前髪をきらきら透かして、小バカにした顔でそう笑った。 * * * 「ねー、なんか不穏なの、聞いた?」 「なに?」 試験も終わったある日、芙由子が眉をひそめて私の席にやってきた。 「部室棟でも盗難が続いてるんだってさ」 「へえ、珍しいね」 たいていこういう話は、単発でぽっと騒ぎが持ち上がって、気づいたら消えているのに。 「バスケ部が被害総額ひどかったって話。あそこ、いい家の坊っちゃんとか多いからさあ」 「バスケ部!」 そりゃ由々しき事態だ! 「いきなり食いつきよくならないでよ、現金だなあ」 「だって加賀見先輩も巻き込まれてると思ったら。先輩んちだってほら、お金持ちだし」 「その加賀見先輩が、夜間部をかばって孤立してるらしいよ」 芙由子の顔が、案じているように曇る。 「え?」 私はちゃんと聞こえていたのに、なんでか聞き返した。 「──先輩!」 帰り、校舎を出たところで先輩の背中を見つけ、駆け寄った。 両手をポケットに入れて歩いていた先輩が、振り向いてちらっと笑い、「一緒に帰る?」と片手でおいでおいでをしてくれる。 「あ、はい…あの、でも」 …部活は? その言葉を飲み込んだ。
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