Episode 03. ボーイミーツガール

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Episode 03. ボーイミーツガール

Episode 03. ボーイミーツガール ──────────────────────── 「最近、あの女の子見ないけど、喧嘩?」 「あはは…行ってきます」 「がんばってね」 アパートの大家さんの見送りに手を振って、バイト先へと急いだ。 本当は4限の講義に出て、そこから行くはずだったんだけど、なんとなく気が乗らなくて、この時間まで部屋から出られなかった。 なんか俺、もうダメダメだ。 「おはようございまーす」 「おー、康太(こうた)、いきなりで悪いんだけど、これ西口前店に届けて」 バイト先に顔を出した瞬間、店長がクーラーバッグを渡してきた。 「了解っす」 急いでユニフォームに着替え、店を飛び出す。 二駅ほどの区間に6店舗を持つこの九州居酒屋は、200種類を超える焼酎の品揃えと地元から取り寄せた食材が売りの、人気店だ。 大きな駅をぐるっと回る形で、10分ほど小走りに駆けると目指す場所に着いた。 「お疲れさまです、お届け物」 「おっ、サンキュー」 キッチンに入っていた店長さんが、すぐに中身を出してクーラーバッグを返してくれる。 「あっ、康太だ」 「お疲れっす」 俺は今の店舗に呼ばれるまでは、こっちの店舗で働いていたので、社員さんもバイトも顔見知りが多い。 みんなに挨拶だけして取って返そうとしたら、店長さんに呼び止められた。 「お前、最近なんかしぼんでんだって?」 「こっちまでその噂ですか」 「なんだっけ、例のちょっと怖くてかわいい彼女の名前」 「もう彼女じゃないです」
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