237人が本棚に入れています
本棚に追加
/842ページ
千波は周りを気にして、小声で話し掛ける。
「顔を上げて?お願い!」
「小学校の頃の事、本当に悪かった……ずっと、気になってた。鈴木の事……
頭の隅から離れなかった……何年経っても。
この間偶然会ってから、また思い出して……で、ツイッターで、ここの店でお前がスタッフで居る写真見つけたから……だから」
「それで今日、こうして来てくれたの?」
宮本は顔を上げて頷いた。
「どうして、あの頃私を毎日虐めてたの?」
宮本は、気まずそうに視線を泳がせた。咳ばらいすると立ち上がり千波にまっすぐに向き直る。
「鈴木千波の事が、好きやったから」
「えっ……」
その言葉を理解しようと、頭の中で反芻していたその時。
後ろから、誰かにぎゅうっと羽交い締めにされた。
……仄かに薫るタバコ……
「ヒロ……さん」
後ろを振り向くと、金髪の間から覗く二つの大きな目が鋭く宮本をとらえている。
「移動日やから千波の顔を見にやってきたが……来て正解やったな。誰やお前?」
ヒロの眼光に、宮本は怯む事なくハキハキと答えた。
「thunderのヒロさん!俺、thunder大好きなんです!会えて滅茶苦茶嬉しいです!」
と声を弾ませたが、ヒロの返事は素っ気ない。
「それはどうも、おおきに」
ぶっきらぼうに言うと、千波の身体を更にぐいっと引き寄せた。
最初のコメントを投稿しよう!