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広く栄えた街の路地裏で何度も悲鳴が響く。それも1つや2つじゃない。
男のものか女のものかさえ判別できないほど濁った声だ。
それは命絶える間際に吐き出されてくぐもり、時には恐怖に脅え甲高い。様々な声が奏でる旋律は聞く者に吐き気を促すほど不快なものだった。
震える青年の眼前には残酷な光景が広がっている。人間の姿をした2体の化け物が双眸を金色にぎらつかせ人間を喰らっていたのだ。
積雪に鮮血が染み渡り、喰われた人間の残骸があちこちに転がる。5人もいた青年の仲間はもう誰ひとりとして生きていない。
彼は逃げるべきだと頭では理解していたが、腰が抜けて立ち上がることすらできない。
肉や骨を砕く気味悪い音に耳を塞ぎたくてもそれすらできず、青年は恐怖から涙を流した。
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