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1体の化け物が眼前の人間に興味を失くすと、狂気的な双眸は青年に注がれ、ゆっくり接近を始める。
それらに獣のような牙や爪などない。こんな状況じゃなかったら化け物などと誰も思わないほど人間と酷似した姿をしている。だから恐ろしいのだ。
外見で人間だと判別できてしまうから油断し、簡単に殺されてしまう。
いっそ獣のような牙や爪を持っていてくれたほうがよかったと青年は思う。ひと目で化け物だと判別できる姿だったら少なくとも自分から近づくことはなかったと。
異質な笑みを浮かべ見下ろしてくる化け物から視線を落とした青年は生きることを諦め、涙を流しながら堅く目を閉ざした。
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