第1章 グリム

4/4
前へ
/272ページ
次へ
「――現場付近を巡回中、グリムが喰い散らかしたと思われる遺体を路地裏で発見。鑑識の結果、遺体は全部で6体。後処理は鑑識に任せ、自分はこのままデューク・ハーコート、スズネ・ベルと共に周囲の巡回に戻る。以上、報告ルイ・オリヴァーより」    背中に獅子が描かれた漆黒のコートを纏った2人の青年と1人の少女が踏み締める雪は、鮮やかな赤に染色されている。 赤い雪の中には引き裂かれた肉塊がいくつも沈んでおり、それら全てを入念にチェックするのは、ルイが鑑識と呼んだ者たちだ。  ルイは無線機を切断すると、重々しく残虐な光景を見回した。   「相変わらずひっでぇ殺し方するよなグリムの奴ら」 「うん、そうだね。殺された人たちが可哀想」    慈悲深い視線を遺体に送るスズネがルイの呟きに答えた。   「ここには人間の足跡しかない。おそらくアルファのグリムによる犯行だろうな。 この場は鑑識に任せて逃走したグリムを追うぞ」    デュークが冷静に状況確認をするとルイとスズネは浅く頷き、血の匂いが充満するその場を後にした。
/272ページ

最初のコメントを投稿しよう!

219人が本棚に入れています
本棚に追加