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電車の窓の外を眺めて私はずっと考えていた。
本当に私の人生って何にも特別なことなんて無いし、他の人から見たら面白くないんだろうなって。
終電ギリギリの車内には酔いつぶれたサラリーマンやOLが何人か、そして鳶職の若いお兄さん二人だけだった。
もう一度窓の外に視線を戻すと工場の屋上か何かでフットサルしてる集団がいた。
こんな遅くまで身体を動かしていた彼らの顔は生き生きしていてとても楽しそうだった。
年齢は30前後くらいか、でも私からすれば青春してるようにも見えて、少し微笑んでしまうような光景だった。
そして、少しだけ虚しくなった。
本当に何もない自分の人生がちょっとだけつまらなくて物足りなく思った。
もしかしたら今までも思っていたけど、それを抑え込んでいたのかもしれ無い。
電車がホームに滑り込み、開いた扉をでて階段を降りて、改札を抜けた。
もう一時だしさすがに誰も歌ってい無いだろう。
そう思っていた私の予想は外れていた。
改札を抜けると男の人の声が聞こえた。
張り上げるわけではなく、力任せに叫ぶわけでもなく、ただただ優しく、柔らかく歌い上げる歌声に私は引き込まれ、あたりを見回してその声の主を探した。
アコースティックギターを持った彼は駅の線路の下を通ってる歩行者用のトンネルの中で座り込んで歌っていた。
見た目は捨て犬のようにボロボロで、ズボンは所々破れ、髪の毛もボサボサだった。
普通だったら何人かの人が座り込んでるか立って聞いているはずなのだが、さすがに時間も遅いのか、一人もいなかった。
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